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小ネタ07

 

「これは初めて風を自分で起こせたときに記念に撮ったものですな。それはもういたく興奮して、庭の花にまで被害が及びそうになったのを急いで止めたのですよ」

「なるほど」

「ねえ」

「ああ、懐かしい。こちらは大会で優勝したときのもので、もらったばかりのトロフィーを転んで折ってしまって呆然としているところです」

「この世の終わりみたいな顔だ」

「ねえって」

「おお、これも撮ってました。若は目を逸らすと直ぐにどこかに飛んでいくものですから、小さい頃はよく抱っこひもで私の胸に括り付けて拘束してたものです」

「これは、ふ、傑作・・・・・・」

「ねえ! 買ったドローン一日で壊しちゃったのは反省してるから! 旦那の前で羞恥プレイ止めてって!」

「今の姿も撮っておけ。『椅子に縛られ反省中』とな」

「も~イヤ!」

 

ーーー

 

「前に竜巻の中に入って移動してたことあるだろ。なんだあれは。意味が分からない」

「瞬間移動できる人がそれ言う? でも結構簡単だよ。旦那も入ってみる?」

「何?」

「入るときは風が一番細くなったタイミングで一気に行くと良いぜ」

「大縄飛びか?」

「あとはこう、足で頑張る!」

「まあ、機会があったらな」

「旦那の瞬間移動も教えてくれよ! かっこいいよなーアレ」

「軍で教えてたマーシャルアーツとは訳が違うぞ」

「瞬間移動が標準搭載の軍隊はちょっと想像したくないな」

「要は明鏡止水の心だ。集中し、自分の内側と外側の流れを変化させる」

「おお?」

「静止した水面に水滴が落ちたその瞬間」

「おお!」

「とは関係なく、ふっ、と身体の力を抜くとできる」

「・・・・・・」

「おい、竜巻の中に引きこもるな。細くなったぞ。入って良いのか?」

 

ーーー

 

「スマフォをアザムに没収され早二時間」

「手が震えてるぞ」

「別に今すぐ見たいって訳じゃなくて、失って初めて分かる大切さというか、オレが側に居ないとダメだーって気付くみたいな」

「依存症だな。より離れた方が良い」

「墓穴っ」

「落ち着きを持て落ち着きを」

「ダメだ。旦那、今どんなメッセ来てるか想像で言って」

「嫌だが」

「頼むよ、な?」

「い、『いいお天気ですね』・・・・・・?」

「ぐあ~~~! 面白いとSNS書き込みたくなるからダメ! 却下!」

「知るかぶん殴るぞ!」

 

ーーー

 

「旦那ー? 寝るなら眼鏡外しなー?」

「・・・・・・」

「これだもんよ。怪我しても知らないよー?」

「怪我は・・・・・・しない」

「それどこから来る自信? 外しちゃうからね」

「・・・・・・」

「うん、おやすみ」

 

「その時、あいつ眼鏡外すのがすげぇ上手くてさ。あっ、なるほどなーって思った訳よ、俺は」

「飯の席に目の前でイチャつかれたのは同情するけどよ、オレに言うなよ。人様の事情を」

「悔しいんだ俺は」

「何が」

「俺にお前みたいな色気があればあの空気に負けずに済んだのにって・・・・・・」

「ひとりでやれよ負けず嫌い」

 

ーーー

 

「金持ちの枯れた老人が若人同士の性行為を観察する、みたいなシーンあるだろ」

「誰ー? 旦那に変なの見せた人ー」

「会ったことはあるのか?」

「パーティとかで? いやあ・・・・・・もしかして心配してる?」

「そんな訳」

「あはは。まあ気になるならさ、オレのボディガードなんてどう?」

「アザムがいるだろ」

「屈強な付き人をふたりも従えるオレ! うーん、ますます気品さに磨きがかかっちゃうなぁ」

「丁重に断る」

「あと、『事実は小説よりも奇なり』って言うだろ?」

「・・・・・・つまり?」

「もっとスゴいのがいる」

「真剣に考えさせてもらおう」

「やりぃ」

 

ーーー

 

「お。アザム、お疲れ」

「若、お待たせをしました」

「で? ナイシャールの初講座、どうだった?」

「皆まじめで良い方ばかりでしたよ」

「へえー。じゃあきっと、これからお互い有意義になるだろうね」

「ええ。このアザム、全員を必ず立派な執事に仕立て上げます」

「うんうん。オレも頑張らなきゃだな」

「若、くれぐれも」

「無茶はするなー、だろ? わかってる。オレにできることをするだけさ」

「若・・・・・・」

「でも、やることやったらまた世界救っちゃったーって場合はゴメンな、アザム」

「若・・・・・・」

「おーっと! お腹が空いたなぁ! うん、これは主人の危機だぞ従者よ」

「お食事の後は直ぐ訓練に致しましょう」

「ええ、今日撮った動画の編集が」

「まずは護身術、柔術に加え、周りにあるものを利用する術までそれはもうみっちり」

「爺に逆らえないヒーロー・・・・・・カッコ悪!」