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お題ひねり出してみた
軒へのお題は『誰だこいつを甘やかしたのは』です。
神に形はない。
先人の言葉を拝借するのであれば、人の手によって造れる次元にあらず。超自然的で、抽象的な存在でなければならない。偶像に祈りをささげた者は、すげなく命を奪われた歴史もあるという。それを踏まえ、自分は神なのか否か。前提として、否だ。確かに、この耳はオーディンの烏に近しいだろう。手はアクスレピオスに次ぐだろう。力はシヴァにいずれ追いつくだろう。だが此処にいる。先人たちが最も忌み嫌い、それでも離れきれない俗物の形として存在する。であれば、奇跡を崇拝し、時には恨む立場でもいいのか? 答えは応だ。
「来てくれるって信じてました」
彼のものが抽象であるならば、如何なる現象にも俯瞰でなければならない。口を出す喉も、聞く耳も、差し伸べる手も、歩く足すらないのだから。対し、この口はどうだ? 耳は? 手も、足もどうだ?
「絶対に、助けてくれるって」
何よりも、こうしてたったひとりの人間を甘やかしているのは、何処の誰だ?
人を喜ばせるという明日までは満たされる快楽を、自分は知っている。舌に押し付けた角砂糖が溶けていくように、ぐずぐずにするという永遠の快感は、これから知る予定だ。未来の堕落した彼の姿は、他を救いの道に誘うやもしれない。だが無駄だ。林檎の手触りも、桃の甘さも、この信者には十二分に教えた。もう戻れはしない。
願わくは、この行いが神に愛されますように。